トラマドール

副作用の少ない非麻薬性の鎮痛剤

トラマドールとは非麻薬性の鎮痛剤になり、がんなどの慢性的な疼痛を抑えるために使用されます。

 

この薬は主に2種類の作用を持っており、1つ目は脊髄のオピオイド受容体という物質を刺激することで侵害刺激伝達を防ぐというものになります。

 

2つ目は下行性痛覚抑制系の作用を活性化させる効果があります。

 

1つ目の侵害刺激というのは、人の細胞や組織に傷を負うほどの強い刺激のことを指します。

 

脳や脊髄に存在するオピオイド受容体は強い鎮痛作用を与える働きがあり、トラマドールを服用するとこのオピオイド受容体を活性化して、痛みを感じさせる侵害刺激が脳に届くのを防ぐことになります。

 

2つ目の下行性痛覚抑制系とは脳から体のあらゆる部分に伸びている神経のことを指し、痛みを感じにくくする働きを担っています。

 

この神経系はセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が多ければ多いほど活発に活動し、より痛みを抑えてくれます。

 

この薬には神経伝達物質が脳神経間で使用された後に吸収されるのを防ぐ作用があり、神経の中にセロトニンとノルアドレナリンを豊富に保つことができるので下行性痛覚抑制系が活発に働くことができます。

 

こういったメカニズムによって、トラマドールを服用すると様々な痛みを軽減させることができるのです。

トラマドールの使用方法と副作用

この薬は、基本的には1日に4回、約4時間から6時間間隔で使用することになります。

 

痛みを抑える薬としてはモルヒネなどが知られていますが、トラマドールはそれよりも効果が緩やかで、モルヒネの約1/5ほどの効果しかありません。

 

その分副作用も少ないので、痛みが比較的軽い患者や中程度の患者へ使用されることが多くなっています。

 

トラマドールに含まれているオピオイド受容体には副作用を現す可能性もあり、服用すると吐き気や痒み、便秘や呼吸抑制など様々な症状が現れることもあります。

 

とは言え、身体に与える作用は比較的弱いため、副作用が出たとしてもそこまで重篤な症状に繋がることはありません。

 

モルヒネのように依存性も無いため、痛みを抑えるという目的の医薬品としては手を出しやすい部類に入ります。

 

ただ、人によっては服用すると眠気を感じたりめまいなどの症状が出るケースもあります。

 

このため、服用直後に車を運転したり高所で作業するなど危険を伴うことはしないようにしましょう。

 

他の医薬品でも言えることですが、服用中はアルコールの摂取を控えるように指導されます。薬の効果を最大限に発揮するためには、アルコールを摂らないよう注意する必要があります。

 

また、この薬を服用する場合は一緒に飲むのが禁忌とされている薬もあります。

 

モノアミン酸化酵素の働きを阻害する薬などが該当し、この薬を服用するとセロトニンとノルアドレナリンの量を増やす効果があります。

 

トラマドールを服用していると体内にこれらの物質が多くとどまるようになるので、この状態でモノアミン酸化酵素の働きを阻害する薬を飲むと、体内のセロトニンとノルアドレナリンの量が過剰となり、身体に様々な悪影響が出てしまうのです。

 

例えば、訳もなく不安になったりイライラしたり興奮するなど気持ちのコントロールが効きにくくなったり、自分が意図しない身体の震えや緊張、発熱や動悸などの症状が見られるようになります。

 

このため、こういった阻害薬と同時に服用するのは禁忌とされていますが、あくまでも同時摂取がダメなだけで、服用後2週間以上経過していれば互いに影響は無いとされています。

 

もし他の病気などで禁忌とされる薬を処方される場合は、服用する前に医師や薬剤師とよくカウンセリングを行い、服用するタイミングなどを徹底的に確認しておくようにしましょう。

軽度から中等度の痛みに対して使われる鎮痛薬です

トラマドールはオピオイドと呼ばれる鎮痛薬のひとつで、軽度から中等度の痛みに対する非麻薬系の弱オピオイドとなります。

 

強力な麻痺系オピオイドのモルヒネとは違い、作用は穏やかで副作用が少ないことでも知られており、呼吸抑制などの重篤な副作用がないことから使い勝手の良い鎮痛薬とされます。

 

がん性疼痛に対するWHO方式では3段階中の2段階目で採用され、1段階目の非オピオイド鎮痛薬で効果が不十分であると判断された際に、次のステップとして採用されるようになっています。

 

トラマドールは脊髄後角のオピオイド受容体を刺激することで侵害刺激伝達を抑制し、さらに下行性痛覚抑制系を活性化させることで様々な疼痛を抑えることができるようになっています。

 

オピオイド受容体は3つのサブタイプが存在しますが、その中でも中枢および末梢神経系に広く分布するμ受容体に強く作用し、強い鎮痛作用を発揮するのがトラマドールの特徴となります。

 

加えてもうひとつの鎮痛経路である下行性疼痛抑制系には、神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンの神経系統が存在しますが、これらの再取り込みを阻害することで下行性疼痛抑制系が活性化することが分かっていて、神経伝達物質を増やすことで痛みが和らぎ、鎮痛効果を示すようになります。

がんや抜歯後の疼痛など様々な症状の痛み止めに使われています

販売当初はがん疼痛治療法に使用されるものでしたが、後に様々な症状に適用され、現在では非がん性慢性疼痛、抜歯後の疼痛などで使用されるようになっています。

 

血中濃度半減期はおよそ5〜7時間とあまり長くないため1日4回の服用が必要となり、4〜6時間の間隔で投与することになります。

 

鎮痛効果は経口モルヒネのおよそ5分の1となっているので、強力な鎮痛作用は期待できませんが、一般的な痛みに対しては高い作用を発揮します。

 

オピオイドμ受容体にはμ1とμ2の2種類が存在し、それぞれに受容体によって鎮痛以外にも吐き気や便秘などの症状を引き起こすことがあります。

 

よってトラマドールによるオピオイド受容体への刺激は副作用を起こすスイッチともなり、作用は穏やかなためリスクは少ないですが、何らかの副作用が発現する可能性があります。

 

主に発現する副作用は吐き気、嘔吐、眠気、視覚異常、便秘、呼吸抑制などで、使用していくうちに慣れて軽くなることもありますが、吐き気などは長引く傾向にあります。

 

どうしても副作用が辛い場合はかかりつけの医師に相談して、便秘などは下剤で対処するようにしましょう。

 

滅多にありませんが重度の副作用として、けいれんや意識消失といったものがあり、特にてんかんや脳に障害がある、高齢者の長期服用ではリスクが高まります。

 

また、安定剤や睡眠導入剤などを使用していると、神経伝達物質の再取り込み阻害作用によって発現リスクが高まるので注意しましょう。

 

具体的には抗けいれん薬のカルバマゼピン、抗不整脈薬のジゴキシン、抗血栓薬のワルファリンと併用すると相互作用を引き起こすことがあります。

 

加えて抗うつ薬となるSSRIなどは、トラマドールとの作用に影響するためセロトニン症候群やけいれんを起こしやすくすることも考えられます。

 

一般的な市販薬との併用は問題ありませんが、現在何らかの症状によって治療を受けている場合は、併用による相乗効果で副作用を起こす可能性があるため、かかりつけの医師と相談して併用が可能か確認しておくようにしましょう。

 

高用量で長期服用をすると代謝のために肝機能障害を起こすこともあるため、長期療養をする場合は定期的に肝機能の検査を受ける必要があります。

 

妊婦、授乳中の女性、小児での投与は安全性が確立されていないので、原則として処方されることはありません。

 

高齢者でも使用は注意が必要となるので、医師の指示に従って服用するようにしましょう。

トラマドール