トラマドール

肺ガンや肝ガン、すい臓ガンなど様々なガンの鎮痛治療に使われています

トラマドールは、一般的なアスピリンやアセトアミノフェン、イブプロフェンなどの非オピオイド系の鎮痛薬では充分な鎮痛効果が得られない肺ガンや肝ガン、すい臓ガンなど様々なガンに鎮痛治療に対して、痛みを抑制する神経系の働きを促進して非常に高い鎮痛効果を示す特殊な作用機序を持つ非麻薬性の鎮痛薬であり、世界保健機関が定める癌疼痛治療法の3段階中の2段階目で用いられる弱オピオイド系の鎮痛薬です。

 

この鎮痛薬は、ガンの激しい疼痛だけではなく、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛、心因性疼痛に分類される慢性疼痛に対しても非常に高い効果を示すとされ、腰痛症や変形性関節症などの侵害受容性疼痛、帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害性疼痛などの神経障害疼痛の鎮痛治療にも用いられています。

 

トラマドールは、ケシの未成熟果実の乳汁液を乾燥させたアルカロイドから人工合成されたオピオイド系の鎮痛薬であり、オピオイド系の鎮痛薬にはモルヒネやフェンタニル、オキシコドンなどの麻薬性オピオイド鎮痛薬、ペンタゾシンやブプレノルフィンなどの麻薬拮抗性鎮痛薬などがあります。

 

人間の痛覚は、組織の損傷によってサブスタンスPやブラジキニン、プロスタグランジン、アセチルコリン、セロトニン、水素イオン、カリウムイオンなどの疼痛伝達物質が侵害受容線維と呼ばれる感覚神経を刺激する事で痛みのシグナルが、脊髄後角を経て脊髄の両側を上行し左右視床の髄板内核に達する脊髄網様路を通り、大脳皮質領域の感覚野へと伝達され痛みを認識します。

 

トラマドールは、経口服用後肝臓の酵素シトクロムP450-2D6のO-脱メチル化反応により、μオピオイド受容体との親和性が約200倍とされるO-デスジメチルトラマドール(M1)に代謝され、侵害受容繊維のC線維やAδ線維の前シナプス末端部に存在するオピオイド受容体に特異的に結合するリガンド物質として結合します。

 

結合したM1は、膜電位依存性のカルシウムイオンチャンネルの働きを阻害し、プロスタグランジンやブラジキニンなどの疼痛伝達物質の放出を抑制する事により、非常に高い鎮痛効果が期待出来、未変換体の数倍高い鎮痛効果を示します。

 

しかし、トラマドール自体のμ-オピオイド受容体の活性力は、ノルアドレナリン及びセロトニン再吸収阻害作用との相乗効果により、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に非常に高い効果を示します。

 

トラマドールには、セロトニン・ノルアドレナリン等のシナプトゾームへの再吸収阻害作用による疼痛抑制作用だけで無く、G蛋白結合受容体サブスタンスPの阻害作用などにより、下行性疼痛抑制系を活性化し神経因性疼痛への鎮痛効果を発揮します。

 

現在では、ノルアドレナリントランスポーターの阻害作用やカテコールアミンの分泌抑制作用、ムスカリン受容体の抑制などにより、下行性疼痛抑制効果を高めていますが、一般にセロトニン再吸収阻害作用よりも、ノルアドレナリン再吸収阻害作用の方が鎮痛効果が高いとされていています。

 

用法用量としては、1日100mg?300mgを4回に分けて経口服用しますが、症状に応じて適宜100mg単位で増減し、1日の服用上限を400mgとしています。

 

副作用としては、長く続く傾向のある便秘や吐き気、服用を継続するうちに症状が軽くなっていく眠気など軽微な症状が発現し、極めて稀にけいれんや意識消失、呼吸困難、アナフィラキシー様症状などの重篤な症状が発現するケースもあります。

 

しかし、モルヒネと比べて神経中枢や消化器官への悪影響は非常に少ない為に副作用の発症頻度も非常に少なく、薬物依存性の発症リスクも少なく向精神薬や麻薬に指定されてい無い安全性の高い鎮痛薬です。

トラマドール